"jeweils"の訳し方2017年01月25日

下記の文章は、A)からD)の4つの成分を含有する組成物について、A)の量を、A)-D)の全量(100質量%)を基準として規定したときの文章である。


ドイツ語: Die erfindungsgemäße Zusammensetzung enthält als Komponente A) 55 bis 90 Gew.-% vorzugsweise 70 bis 80 Gew.-%, besonders bevorzugt 72 bis 78 Gew.-% Aluminiumoxid, vorzugsweise α-Aluminiumoxid, jeweils bezogen auf die Summe der Komponenten A) bis D).

英語: The composition of the invention comprises, as component A), from 55 to 90% by weight, preferably from 70 to 80% by weight, particularly preferably from 72 to 78% by weight, of aluminum oxide, preferably α-aluminum oxide, in each case based on the sum of the components A) to D).

日本語: 本発明による組成物は、成分A)として、そのつど成分A)〜D)の合計に対して55〜90重量%、好ましくは70〜80重量%、特に有利には72〜78重量%の酸化アルミニウム、好ましくはα−酸化アルミニウムを含有する。


ここで、日本語の「そのつど成分A)〜D)の合計に対して」との訳文に注目してもらいたい。

"jeweils"の訳語は「そのつど」になっているが、この単語は文脈次第で「そのつど」のほかに「それぞれ」とも翻訳される。

すると、「そのつど」と「それぞれ」のときで、2通りの解釈が考えられる。

① 「そのつど」のとき - 常に成分A)~D)の量を基準とすることを指す

② 「それぞれ」のとき - 成分A)の重量%の各範囲を指す

①と②のどちらが正しいかを見分けるには、成分A)の量の範囲が1つだけ記載されている場合に"jeweils"があるかないかを確かめるだけでいい。

つまり、以下に示す文章のように、量の範囲が「55〜90重量%」と1つだけ記載されている場合に"jeweils"がなければ②の解釈が成り立つ。なぜなら、範囲が1つだけのときは、範囲が複数あるときのように「それぞれ(jeweils)」と付す必要がないからである。一方で①の解釈がもし正しければ、範囲が1つであろうと複数であろうと常に基準を示すために「そのつど(jeweils)」と付されているはずである。


Die erfindungsgemäße Zusammensetzung enthält als Komponente A) 55 bis 90 Gew.-% Aluminiumoxid, vorzugsweise α-Aluminiumoxid, bezogen auf die Summe der Komponenten A) bis D).

The composition of the invention comprises, as component A), from 55 to 90% by weight, of aluminum oxide, preferably α-aluminum oxide, based on the sum of the components A) to D).

本発明による組成物は、成分A)として、成分A)〜D)の合計に対して55〜90重量%の酸化アルミニウム、好ましくはα−酸化アルミニウムを含有する。


そう、このような類いの文章をいくつか確認できれば、②の説が正しいと確信を持てるのだが、いかんせん翌日になるとキレイさっぱり忘れてしまう。

明日は覚えているかな。。

出典:WO2015036291 (A1)

"sprich"の訳し方2017年01月28日

標題の「sprich」は、日本語で「つまり」という意味。

ドイツ語学習者なら、「also」「das heißt」「kurz gesagt」などを思い浮かべてみて欲しい。

しかしながら、この単語、おそらく動詞の「sprechen」が変化した単純な形ではあるものの、そこらへんの辞書には掲載されていない。

もちろん「≦ 300 g/l (sprich: 300 Gramm oder weniger) 」という文脈から判断すれば、「sprich」が「つまり」の意味であることぐらい自明なのだが、非ネィティブの翻訳者からすると、果たしてこの単語のスペルは本当に正しいのか、もしかして厳密には「つまり」の意味じゃないのではないか、などと不安になってしまう。

そして、こういう(謂わばどうでもいい箇所で)時間をロスしてしまうのが私の欠点。

そこで、ネイティブに念のため確認すると、

「das heßt!」

と即答された(チーン)


ドイツ語:Als Komponente B) enthält die erfindungsgemäße Zusammensetzung eine Natriumverbindung, die bei pH 7 bei 20 °C eine Löslichkeit in Wasser von ≦ 300 g/l (sprich: 300 Gramm oder weniger) hat.

英語:As component B), the composition of the invention comprises a sodium compound which at a pH of 7 at 20°C. has a solubility in water of ≦300 g/l (in words: 300 grams or less) .

日本語:成分B)として、本発明による組成物は、pH7及び20°Cで≦300g/l(300グラム以下という意味)の水溶解度を有する。


なお、対応US出願のものは「in words」と記載されているが、これは「in a word」や「in short」、または「in other words」の誤記だろう。

ちなみにドイツ語の「つまり」には、上記以外に「kurzum (kurzemじゃないよ!)」というフレーズがあるのもご存じだろうか?

大独和辞典をひらくと、「要するに」、「手短でいえば」と記載されている(こんなのもあったんだねぇ)。

それにしても、当時私は「sprich」を「つまり」にしているかと思いきや、いま公報で見返すと「~という意味」で訳していた。。

出典:WO2015036291 (A1)

"Röllchen"の訳し方2017年01月29日

先日、ドイツのとある化粧品メーカーが出願した日焼け止め剤について翻訳する機会があった。

この日焼け止め剤の特徴は、ヒトが肌に直接塗り込んだ際に「ダマ」が発生しないというものであった。

「ダマ」というと、女性が下地クリームなしでそのままファンデーションを塗ったときに出てきてしまうものを思い浮かべてもらいたい。

要は、この日焼け止め剤は、皮膚上に日焼け止めクリームを塗り込んだ際に、その摩擦で角質または垢が剥がれ落ちたりすることや、当のクリーム成分が汚れとなって発生したりすることを極力なくしたものである。

さて、肝心の「Röllchen」という単語、

大独和辞典には、

① Rolleの縮小形

② 巻きカフス


※単数の2格(Röllchens)以外は複数形を含めてすべて「Röllchen」


とある。

ただし、②の意味は明らかに文脈にそぐわないため、すぐに選択肢から外れる。

そうすると「① Rolleの縮小形」について検討する必要がある。

ここで、「Röllchen」における「...chen」の部分は、

「Hündchen(小犬)」や

「Kleinchen(小包)」のように、

「愛らしいもの」や

「小さいもの」

を意味する後つづりである。

すなわち、上記の「Hündchen(小犬)←「Hund(犬)」のように、「Röllchen」の場合も「Rolle」が元々持つ意味の「小さいもの(縮小形)」を考えてみればよい。

ここで、「Rolle」というと、例えばトイレットペーパーのように「丸く巻かれてあるもの」が真っ先に頭に浮かぶ。

そうなると「Röllchen」は「小っちゃい巻物」なんだろうか。 えっ、お寿司?春巻きとかのイメージ??

しかしながら、原文には


Nachteilig am Stande der Technik ist jedoch der Umstand, dass es beim Aufträgen und Verreiben der Sonnenschutzgele auf der Haut häufig zur so genannten „Röllchenbildung“ kommt.


と記載されていた。

すなわち、冒頭で述べたように「Röllchen」とは、日焼け止めクリームを皮膚に塗ったり擦り込んだ際に形成(Bildung)されるものを指していた。

ならば、ここでいう「Röllchen」とは、丸く巻かれた円筒形のもの(巻き寿司)が、極端な話、さらに丸みを帯びて縮小したもの(米粒)を想定しているのだろう。

これって、単に「ぶつぶつ(つぶつぶ)のかたまり」だよね。。

そこで、この「つぶつぶのかたまり」は、この発明の属する技術分野を考慮して「ダマ」とした。

ぶつぶつ、、

つぶつぶ、、

のかたまりといえば、

タピオカが食べたくなってきたぞ!

出典:WO2015018548 (A1)

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